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2007年1月

ダイコンを売るようにして小説を売る

 日曜日の山形市での話。ブログで小説を公開するのは打海にマイナスにはたらくのではないかという指摘を、文芸評論家の池上冬樹さんからうけた。どうして?。打海文三が売れない作家であることを世間に公表するようなもんじゃないか。なに言ってるのそんなこと世間はとっくに知ってるよとわたし。2人で大笑い。池上さんは業界の事情に疎いわたしにほかにもいろいろ助言をくれた。おおざっぱに言うと業界の政治学のようなこと。ブログをはじめておよそ1ヶ月、親身になって率直に意見を言ってくれたのは池上さんただ一人。大切な友人だとつくづく思うのだが、小説講座と同じで話がまったく噛みあわない。わたしはもう子供ではないから業界の政治学も想定の範囲。映画屋さんの世界にも似たところがある。そういうのは意味もなくつきまとうノイズのようなものだ。百姓の世界はぜんぜんちがった。農協はもうガタガタで金融にしか関心がなかった。若い百姓たちは自分の好きなやり方でたとえばダイコンをつくり、自分が売りたいように売った。その経験から言うとダイコンをつくって売ることと小説を書いて売ることに本質的なちがいなんてない。どちらも売れるかどうかわからないのに種を播くのだ。そもそも収穫できるかどうかもわからない。病気で全滅するかもしれない。途中で物語の致命的な欠陥に気づいて投げ出すかもしれない。運良く収穫できたとしよう。こんどはマーケットの試練が待っている。売れるのか。売れたとして絶望的な価格と量なのか。それを決めるのはマーケットだ。そこにはばかげた政治学が介入する余地はない。爽快だ。だからダイコンを売るようにして小説を売るのさ、というようなことをかいつまんで話したら、池上さんは納得しなかったがそのフレーズは気に入ったらしく三次会のバーのカウンターで「ダイコンを売るようにして小説を売るか」と二度ほどつぶやいた。
 でもダイコンを売ったときほどの自信はない。ダイコンがないと人は生きていけないが、小説なんかなくても生きていけるから。

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小説家はひとりの女性を

 ふたたびひきこもり。打海が描く女はいくつかの基本形があってあとはそのヴァージョンだと書いたブログを読んだ記憶があるので探してみたが見つからなかった。まあそんなものかなと思う。非音楽的な耳の持ち主であるわたしでもベートーベンとモーツアルトの区別はつくので作曲家は生涯に一曲しかつくれないという説をむかしから唱えてきた。だから小説家は生涯に一人の女性しか描けないという説も成り立つ。と思う。夜の街で客を物色している六歳の街娼のルカは不登校の十三歳の姫子であり姫子は年齢不詳の探偵のウネ子である。創作上で悩むのは自制しないと登場人物がどんどん増えていきしかもそれを女性にしてしまうこと。いったん女性として描いて男性に描き直すということもざらにある。






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ひさしぶりの外出

 新幹線で午後山形市へ。駅に文芸評論家の池上冬樹さんが迎えにきてくれる。小学館編集者のI氏も合流。雪が愉しみで毎年1月にくるのに雪がどこにもない。遊学館で山形「小説家(ライター)になろう講座」の講師。小説二編とエッセイ一編。淡々とすすむ。鍋を囲んで懇親会。例年わたしと池上さんの意見がまったく噛みあわず、それが爆笑を誘うのだがきょうはそれが聴けなくて残念という声あり。それはですねこの人(池上さんのこと)がきょうは原稿を読んでこなかったので議論にならなかったからです、とわたし。本日はじめての爆笑。なぜ笑いを誘うのか。基本にあるのは池上さんが畏れ多い先生で、その畏れ多い先生の発言をわたしが平然と全面否定するから。たとえば「あなたの言ってることがぜんぜんわかりません」とか。二次会でこのブログでの「家の人」という語法についてあれはないだろと池上さんから批判が。ミクシィの〈打海文三〉コミュニティの管理人のetomanさんが東京から初参加していて池上さんの意見に同調。じゃetomanさんは?「あいかたです」それこそそりゃないだろとわたしは反撃。さくらんぼ農園の農婦で専務で主婦で妻で母で詩人の佐野カオリさんが「家の人って、すてきな言葉ですよね、詩のような」と。聴いたか詩人がそう言ってるんだぞとわたしは叫ぶ叫ぶ。

ワルツ


 詩集 

 著者=佐野 カオリ(さの かおり) 
  装画=浜田 洋子 装幀=亞令

    身中の琴線を弾く曲とともに舞いはじめる〈わたしたいの古びた物語〉。
    肉にさわり骨を盗り…待っていたい。
    永遠と響きかわす一瞬を踊り狂う〈古びた物語のわたしたち〉。第五回山形県詩人会賞受賞

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誉めるのも女子がうまい

 酔っぱらって家に帰ることはめったにない。近所の人たちと年に三回の小説講座と飲み会、あとは編集者と地元で一杯やるのが二回ほど。昨年の小説講座の飲み会があった夜だったか家に帰って酔っているので風呂はめんどくさいと言ったら、下着だけでも替えたらと家の人。汚れたパンツを脱ぎ新しいパンツをはき脱いだ汚れたパンツをはき、あれれ。珍事のひんぱつに自分でおどろく毎日なので、 セブンアンドワイ - みんなの書店 - キャラクタが面白くなきゃ! - 島森ミチル店長のような誉め方をされると飛び上がるほどうれしい。

.『裸者と裸者』の文体と全然違う!1996年の『されど修羅ゆく君は』の方が若さがない。『裸者と裸者』は(2004年なのに)私は読んでて「誰だっ、この若い作者は!」と

 
歳をとっている感覚はまったくない。これが肝心だと思う。脳細胞もふくめて肉体なんかもうどうでもいい。鳥森ミチルさんは『愚者と愚者』の書評でも文体を誉めてくれた。


 この嫌みのないピュアで新鮮な文体は、一種の老練さに基づくものなのでしょう。

 これにはちょっと反論が。のろのろと時間をかけて習得した文章技術が文体の基礎にあるのは事実そのとおりだが、あの文体を発見し選択させ根底でささえているのは若々しい精神だ、のはずだ。







*パンプキン・ガールズ
「鉄兜団なみの戦闘力がほしいね」三千花が言った。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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男子の日記は

 おやじも〈腐〉も出し入れ自在の文体の自由を手に入れた女子の日記は、かわいくておしゃれで無敵だ。では対抗できる男子の日記はないのか、などとどうでもいいことを考えていたらあった。ハンドルネームはカイリetcさん(?)の「それなりの毎日」。これは脱力系。話がおさまるところにおさまったという気もするが、とくに〈店員のおねーさん(ちょっとかわいい)〉というフレーズを効果的に使ったそれなりの毎日 コンビニつながり. は名作だ、と思う。







*パンプキン・ガールズ
「ロケット弾!」ビリィが叫んだ。
 全員が路上に伏せると同時に、路地の奥から赤い炎が飛んできた。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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無敵の人

 73文字ていどだし、わたしの本「ハルビン・カフェ」の覚書だし、lampardさんの快眠日記.から全文引用させてもらいます。 

独特のつくりなので嫌いな人は嫌いでしょう。ワタシは問題なし。ただ後半途中まで、語り手を勘違いしてました。わかってからさかのぼって再読。ふむふむ。

 無敵。読後感はこの二文字につきる。実質上、〈ふむふむ〉のひらがな四文字いや〈ふむ〉の二文字。不眠症に悩まされながら丸二年は費やしてけっきょく睡眠導入剤を使うようになってしまった作品なんだけど、などと野暮なことを言うつもりはぜんぜんない。ほれぼれする。無敵のlampardさん。







*パンプキン・ガールズ
「男も残念ながら売買春は禁止」
「そんなことできるのか?」
 三千花が首を横に振った。
「とくに若い兵士はラブの能力がある男なんて、ほんのひとにぎりよ」
「みんなゲイになれってことか?」アイコがうれしそうに訊いた。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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若い女性が背筋をのばすとき

 バイト先の書店でクリスマスの日に慌しくはたらき、もう帰省してしまう年長の同僚と「よいお年を」と言葉をかけあうまでを描写したあとで supernova*. のあさこさんは日記をこうしめくくる。

 「良いお年を」ってすっごくいい言葉だなぁっておもった。めりーくりすますなんて言葉よりずっといい言葉だなっておもう!他意はない。かわいそうなわけでもない。もちろん強がりでもないです。

 
他意はない、が唐突。つづく二つの否定文はもっと唐突。でも唐突なままにわたしの胸におさまった。どういうことなのか七日間ぐらいは考えたと思う。たぶんあさこさんは自分の屈託のなさに呆れた、あるいは疑念を抱いた、あるいは誰かの気遣いがにじむ助言が聞こえた。お前はもう少し現実をみたほうがいいけど、毎日たのしそうでなによりだ。(これは二日後の日記に引用されたお父さんの言葉です)。で、「他意はない」という短い否定文を使って転調させ、誰かがとがめたわけでもないのに、この若い女性は背筋をぴんとのばしたのだ。書き手の資質と文章技術の幸せな出会いを感じさせる印象的な一文。







*パンプキン・ガールズ
 
不良少女の群れは、池袋の暴動の惨めな敗北のせいで元気がなく、ときおり小さな騒動を起こしては、あっさり射殺された。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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女子の日記はコメント欄もおしゃれ

  supernova*.のあさこ(id:asha)さんの12月21日の日記のコメント欄を読んでうかびあがるのは、まぬけでかわいい二人の女の子。会話を愉しむ能力が女子にはあると思う。これは能力の問題だ。







*パンプキン・ガールズ
 最後の瞬間の映像がふたたび流された。吊るされた半裸のトランスジェンダー、路上でうずくまるクリストフ、脅えた茶色の眼、突進してくる孤児兵、怒声と悲鳴。三千花が嗚咽をもらしてトイレへ走った。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ


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おまえも自分のなかのかわいい女の子を効果的に露出させればいいじゃないか

 女子のおもしろい日記はそのすべてではないが自分のなかのかわいい女の子を適切な場所で適切な表現で短くつまり洗練されたやり方で露出させるのがうまい。このテクニックは年齢に関係なく13歳の女子も23歳の女子も43歳の女子も63歳の女子も83歳の女子も使える。わたしは男だから反則じゃないかと思うことがある。うらやんだりしないで、おまえも自分のなかのかわいい女の子を効果的に露出させればいいじゃないかと。理屈はそのとおりだ。でもなかなか。だったらかわいい男の子は? 少年っぽい男の人が好きですだなんて女子が言ってるのを聞くだけで気持ち悪くなるな。表現に関して男子が鈍くさて不自由なのは、女子のように男の支配欲だの性欲だのを適切な方法であしらって生きていく必要がなかったから、のような気がする。





*パンプキン・ガールズ
 黒い旅団の孤児部隊が駅ビルの内部の掃討をはじめた。隠れていた女の子が引きずり出され、銃床で殴られ、泣き喚き、幌付きトラックに放り込まれた。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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彼女は彼女について書いた人たちよりも品位のある人間だ

 不適切な関係を持った理由を問われて大統領は「それが可能だったから」とこたえた。名言だ。その言葉だけが心に残り、モニカ・ルインスキさんのことはすっかり忘れていたらきょうの毎日新聞で感慨深い記事を読んだ。

抜粋『モニカ・ルインスキ その後』リチャード・コーエン(米ワシントン・ポスト紙コラムニスト)
 裁判記録でも明らかなように、彼女は彼女について書いた人たちよりも品位のある人間だ。
 ルインスキさんは先月、ロンドン大学で社会心理学の修士号を取得し、再びニュースに登場した。
 ワシントン・ポスト紙は彼女を「間抜けだが賢い」と表現した。
 彼女は報道の犠牲者であり、苦難の人生だった。
 彼女は、決して「間抜けだが賢い」のではない。むしろ年を重ね、若い時とは比較にならぬほど賢くなったのだ。似た経験は誰でもする。賢くなる前は多分に恥知らずだが、それが若さというものだ。
 驚くのは彼女の問題における性差別の激しさだ。
 性に奔放だったころの行為で、物笑いの種にされたままの男性がいるだろうか。
 メディアの仲間たちが、彼女を自分のことのように配慮し、今後不当な言葉を使えば道義的なプロとしての責任を負うと理解してくれたら素晴らしい。さもないと、もはやルインスキさんではなく、彼女のことを書く人が物笑いの種になる。





*パンプキン・ガールズ
 店のマネジャー、ボーイ、娼婦、男娼、ポン引き、女性に売春する男の子、トランスジェンダーのセックスワーカーたちが、暴徒と銃撃戦をはじめた。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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初えっちをする場所を探しに

 海人が覇者と覇者で初えっちをする場所を探しにいった。海水浴のときに里里菜と、それぐらいのことをぼんやり決めているだけ。車で5分のところに小さな砂浜があるのでそこへ。1巻につき2回か3回のベッドシーンを予定している。深い考えはない。エンターテイメントだからあったほうがいいだろうというていどだ。書くときにベッドの政治学はかならず頭にある。ベッドは権力関係が発生する場所だ。そのことに無自覚なカップルがいそしむ小説や映画はひく。その最中に恋愛至上主義がどうのこうのと作家が書くともっとひく。ポルノはひかない。ポルノは権力関係を利用して快楽を引き出す。わたしはベッドの政治学を自覚しつつ巧妙に消すことに神経をそそぐ。そうしてできあがるベッドシーンはほとんどポルノだろう。2chで「魚屋のおばちゃんエロすぎ」とか書かれるとうれしい。砂浜の左手に断崖があった。海人が泳げないのでビニールボートを使い、断崖のほうへまわりこめば砂浜からは死角になる。二人はビニールボートのうえではじめる。不安定だ。夢中になってフィニッシュにたどりつくまえに海へ落ちる。里里菜はすいすい泳ぐ。海人は溺れる。悪くないと思う。





*パンプキン・ガールズ
「とにかく呆れたね、女の子たちがでたらめで。ぜんぜん命令にしたがわない」
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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たぶん見なかった映画

隠された記憶
 一度見たDVDを数ヵ月後にまた借りて、再生してから気づいてがっかりするのをくり返した時期があった。注意深くなってそういうミスがなくなったと思っていたら、昨日バスタブから出たとたんにあの映画はつい最近見たぞと思った。妻に夫の知らないトラウマがあってそれを軸にサスペンスが組み立てられて最後に謎が氷解するというようなつまらない映画だと決めつけたのだが、返却するまえに念のため再生してみると見たことあるのか見たことないのかわからなくなった。家の人が言うには、見たことないと思うよ。



*パンプキン・ガールズ
 都心はどこでもそうだが、自立した武装勢力としての少年ギャング団は存在しない。彼らは東京UFの下部組織化するか、女の子のAKで繁華街から駆逐された。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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卑しくない文章

 きのうふれた日記をつける二人の女子のうち23歳ぐらいの人の日記が仕事中になんども頭をよぎり、ふと集中力を失ったときに、文章を書くのを職業にする者が卑しくない文章を書くのはけっこうむずかしいことかもしれないと思った。バスタブに浸かっていると(6時すぎに風呂に入ってそれ以降は仕事をしない)またその人の日記のことを考え、編集者はその人の文章にはまったく関心を持たないんじゃないだろうかとも思った。卑しくない文章だから。



*パンプキン・ガールズ
「駐屯基地を最初に攻撃したのは、女ドライバーの部隊よ」万里が言った。
 グレネード弾の精確な射撃についてはそれで納得がいった。常陸軍の軍事訓練をうけた女のドライバー五百人前後が、都内の運送会社から追放されたのち、テロ部隊を編成していた。
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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女子のほうがだんぜん

 女子の日記のほうがだんぜんおもしろい。男子は堅苦しくっていけない。もちろんわたしをふくめて。というわけで気に入ってる二人の女子の日記の記事をプリントアウトしてなぜおもしろいのか注目。紙じゃないと思考に集中できない。菜摘ひかるさん以外の女性の作家の文章が苦手なのだが、この二人は文章もうまいけど読後感がすごくいい。いろいろ参考にさせてもらって日記をばっさり書き直す。こういう人たちが作家になればいいのにと思う。




*パンプキン・ガールズ
「基本はこうだ」椿子は指を一本立てた。「負傷したら死を覚悟しろ。仲間が助けてくれると思うな。死を恐れない者だけが突撃しろ」
 ビリィが持ちあげたコーヒーカップを途中でとめ、静かな声で言葉を返した。
「そんなこと、女の子はみんなわかってるわ」
愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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愉快な訪問者

 毎晩アモバン7.5mgをかならず飲むのだが、稀に睡眠不足がつづいてうっかり飲み忘れて床につき眼がさめたら午前零時半なんてこともあるのです。きょうは午前4時40分起き。ほっ。けっこう眠れた。うんうん唸りながら二枚ほど書いて、午後は大学ラグビー決勝があるので午前中にプールへ。水中エアロビ(?)の人たちがいなくて泳いでるのは4~5人ですごく静か。気持ちよく1000m。早大X関東学院大はロスタイムで競馬中継に切り替える。早大の力負け。最悪の気分。アクセス解析のデータをながめていたら〈ペニス〉で検索した訪問者1名と〈挿入〉で検索した訪問者1名が。ええ?





*パンプキン・ガールズ
 池袋西口の銃撃戦は、犯罪者とジャンキーの巣窟である地下街を経由して東口の繁華街に飛び火したのち、夜明けに終息した。街頭での戦闘がおおむねその時刻に鎮静化するのは、女の子たちの都合だった。お腹が空いたから、眠くて頭がぼうっとしてきたから、もうたっぷり愉しんだから。

愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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小説家も出たとこ勝負

 覇者と覇者の海人の物語を書く。

 はるか彼方、首都圏で荒れ狂う砲声がどうにかおさまったとき、茨城県北部の人々は自分たちが深刻な問題を抱え込んだことに気づいた。戦乱を逃れた難民の波のうねりである。

 愚者と愚者を書きおえ、べつの小説を一本書き、それから覇者と覇者のプロットにとりかかったところで、じつは書き手もはじめて首都圏の6月の戦争が生み出した難民問題に気づいた。書いている途中で気づくこともしょっちゅうあって、たぶんそっちの方が多くて、登場人物たちが抱える問題群がつぎつぎと明らかになり、書き手は物語の混沌に放り込まれて右往左往することになる。そういう出たとこ勝負がうまくいくこともある。たとえば恋愛小説を書いていくうちに主人公の女の子が男の子に愛されてはいないことに、書き手のわたしが気づき、2人の恋愛の内実を理解するに至ったとき、ああこれで彼女と彼の恋を書けるぞと思ったものです。「ああ、なんてことなの」と姫子は胸をふるわせて嘆いた。「わたしは最初から翼に愛されていない」(愛と悔恨のカーニバル)





*パンプキン・ガールズ
 椿子は、十一月一日、経営者評議会にテロを宣告した。パンプキン・ガールズの池袋事務所が暗殺隊を編成し、経営者評議会に派遣されている黒い旅団の将校を監視して、深夜でも白昼でも機会があれば銃撃した。

愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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壊れていく

 きょうは午前3時40分起床。眼がさめるとぱちんとスイッチが入る。二度寝三度寝なんてざらの家の人が恨めしい。脳みそは午前中にへろへろ。正午すぎに冷や飯と味噌汁を温めながらTVを点けると時代劇をやってる。へんだ。時計を見たらまだ午前11時。壊れていく感覚。





*パンプキン・ガールズ
 銃弾が飛びかう文華百貨店の北側を頭を低くして走った。雑踏の半分は女の子で、きゃあきゃあ逃げまわっていた。インドネシア人の女の子のミニスカートがめくれ、それを気にして片手で尻を隠すと、アイコが「まっすぐまえをむいて走れ!」とどやしつけた。

愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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作文がだいっ嫌いだった

 午後プールで1000m。帰って日記の修正にとりかかる。昨夜、山形市の小説講座について池上冬樹さんからメールで連絡があり、返信のついでにブログをはじめた旨を書きそえると、短時間のうちにこのブログを読んだ池上さんから助言のメールがとどく。なんかいっぱい書いてあった。ようするにおまえは例によって愛想がなさすぎであれじゃ人を遠ざけるようなものというような主旨。ごもっとも。短い言葉でおわらせてあとはなんとか理解してくれと放り投げる傾向が、わたしにはある。子供のときから作文がだいっ嫌いだった。二、三行で書くことがなくなって、かならず先生に指導的助言をもらうから。それなのに一行ですむところを千枚も書かなくちゃならない小説を書くようになるとは。嫌味ではありません。むりしてると思う。で、日記を見直してみたのだが手の打ちようがない。修正したのは〈海人の物語を書く〉を〈覇者と覇者の海人の物語を書く〉へ。これを数日分。





*パンプキン・ガールズ
「ねえ、あなたが、パンプキン・ガールズのボスなの?」女の声が背後から飛んできた。
「うるさい!」アイコが振り返り、女の頭上の天井にサブマシンガンの銃弾を撃ち込んだ。

愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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息子ブッシュとビン・ラディンの哀しみ

 覇者と覇者の海人の物語を書く。

 その夜、和光市の前線司令部にいる海人に、椿子が電話をかけてきてうんざりした声で言った。
「やつらペニスを切り落としてたよ。なんであんなものにこだわるのかな。崇拝したり溺愛したり憎悪したり」

 男根をめぐる愛憎劇を愉しむ能力が女子にはあると思う。男子はどうなのかよくわからない。わたしが小説で男根をしきりにあつかうようになったのは、息子ブッシュとビン・ラディンの滑稽な修辞にみちた論戦に思いがけず彼らのある切実さを感じたのがきっかけです。




*パンプキン・ガールズ
「男の子にも挿入する」
「すごい」
「挿入できるものなら、なんでも挿入する」
「どうなっちゃうの?」
「ほとんどの男の子は、さめざめと泣くね」
 椿子の脚の付け根の小さな段丘が、繊細な部分を探り当てた。林檎が喉を鳴らした。椿子は、圧迫し、擦りつけ、そっとこねた。
「パンプキン」林檎が辛そうな声で言った。

愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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見つけた

 覇者と覇者の海人の物語を書く。

 海人は里里菜の手をにぎる。そっと前後に振る。北海道へ向かう大型フェリーの白い航跡へ視線を送る。潮の香りを嗅ぐ。里里菜の秋のスカートが風を孕んで膨らむ。海人はふいに胸が苦しくなる。

 昨年ブログをうろうろしていて里里菜が〈キラーイ〉という16歳の女の子の書評を見つけた。






*パンプキン・ガールズ
「誰なの?」
「パンプキン!」椿子は軽く節をつけて言った。
「パンプキン!」女が口まねをした。
 椿子はのけぞって笑った。声は出さなかった。女に好かれているのがわかり、女の方も椿子に好かれているのがわかったことも、瞬時にわかった。


愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ


 

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加担する物語

 覇者と覇者の海人の物語を書く。

 夢はいつか叶うと無邪気に信じられた子供時代はとっくにおわっているのだ。殺戮と破壊と略奪の戦争の海にただよい出した孤児は、ふと気づくとずいぶん遠くまできてしまって、どちらの方角に岸辺があるのかさえわからない。

 たぶん裸者と裸者の上巻がこのシリーズでいちばん人気があると思う。巻き込まれ型の物語だから。そういうことなら作者としてはちょっと残念。海人が徴兵におうじる決意を固めた時点で巻き込まれ型の物語がおわり、それ以降、孤児と女が戦争に加担する物語が本格的にはじまるわけで、そういうふうに企てたのだから。わたしは巻き込まれ型の物語に居心地の悪さを感じるし、それでは現実逃避もできない。






*パンプキン・ガールズ
 彼女は覚醒している。欠如の意識はあるが、自分を矮小に感じたりしない。そんな暇なんてない。戦闘とビジネスとセックス。とにかく忙しい。ようするに、いつもどおりの彼女だ。内乱十六年目の夏、彼女が率いるパンプキン・ガールズは、首都圏のアンダーグラウンドで進撃をつづけている。

愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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足がもつれる

  新年はじめて外を歩く。50mほど先の郵便ポストまで年賀はがきを。初日の出を見に行ったが車から一歩も出なかった。仕事を中断して八千代X丸岡。ハーフタイムに渋谷幕張高時代の闘莉王の映像が流れる。彼はあのときほんとうはなん歳だったのか、などとつい不謹慎なことを。ジュビロ入りする高校生フットボーラーはJリーガーにプロの姿勢と熱さを学びたいとのこと。アナウンサーの引用だから正確な言葉ではないかもしれないが、技術的に学ぶ点はないというふうに聞こえた。じじつ足もとにボールがおさまるとぜんぜん慌てないもんね彼は。わたしは想像するだけで足がもつれる。




*パンプキン・ガールズ
 女の子たちはバッグや紙袋へ手を突っ込み、サブマシンガンをとり出して弾倉を装着した。椿子はドアの上のデジタルの赤い数字を見た。十八階を通過。
「出たとこ勝負だ!」

愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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きょうもひきこもり

 きょうも終日ひきこもり。およそ2週間ぶりの原稿でまったく集中できずなにを書いているのかさっぱり。ぶつぶつ自分と会話しながら。家の人が帰省中の息子をグラウンドぐるぐる8周に誘う。買い物でもプールでもつきあってよと言われて断ったことがない息子。よくわかんない母子。グラウンドまで歩けばいいのに車でいき、駐車場でキーをつけたまま車のドアを閉めてアウト。息子がぶうたれながらスペアキーをとりに帰る。あの人はダイエットがしたくて歩くんだから自分でスペアをとりにくりゃいいじゃん、どうしてきみなの?とわたし。家の人の発想についていけない。息子はどこまでもついていくんだろうな。

 デパス0.5mg3錠。ガスターD20mg2錠。寝るまえにアモバン7.5mg1錠。





*パンプキン・ガールズ
 椿子は味方を鼓舞した。
「パンプキン・ガールズのテーゼを思い起こせ!」
 林檎がアイコに小声で訊いた。
「テーゼってなに?」
 アイコが低く唸る声で言った。
「たにんのために命をはるってことさ」
 ビリィが正確なテーゼを教えた。
「おまえが罪を犯すなら、わたしも罪を犯そう」

愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ

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