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ダイコンを売るようにして小説を売る

 日曜日の山形市での話。ブログで小説を公開するのは打海にマイナスにはたらくのではないかという指摘を、文芸評論家の池上冬樹さんからうけた。どうして?。打海文三が売れない作家であることを世間に公表するようなもんじゃないか。なに言ってるのそんなこと世間はとっくに知ってるよとわたし。2人で大笑い。池上さんは業界の事情に疎いわたしにほかにもいろいろ助言をくれた。おおざっぱに言うと業界の政治学のようなこと。ブログをはじめておよそ1ヶ月、親身になって率直に意見を言ってくれたのは池上さんただ一人。大切な友人だとつくづく思うのだが、小説講座と同じで話がまったく噛みあわない。わたしはもう子供ではないから業界の政治学も想定の範囲。映画屋さんの世界にも似たところがある。そういうのは意味もなくつきまとうノイズのようなものだ。百姓の世界はぜんぜんちがった。農協はもうガタガタで金融にしか関心がなかった。若い百姓たちは自分の好きなやり方でたとえばダイコンをつくり、自分が売りたいように売った。その経験から言うとダイコンをつくって売ることと小説を書いて売ることに本質的なちがいなんてない。どちらも売れるかどうかわからないのに種を播くのだ。そもそも収穫できるかどうかもわからない。病気で全滅するかもしれない。途中で物語の致命的な欠陥に気づいて投げ出すかもしれない。運良く収穫できたとしよう。こんどはマーケットの試練が待っている。売れるのか。売れたとして絶望的な価格と量なのか。それを決めるのはマーケットだ。そこにはばかげた政治学が介入する余地はない。爽快だ。だからダイコンを売るようにして小説を売るのさ、というようなことをかいつまんで話したら、池上さんは納得しなかったがそのフレーズは気に入ったらしく三次会のバーのカウンターで「ダイコンを売るようにして小説を売るか」と二度ほどつぶやいた。
 でもダイコンを売ったときほどの自信はない。ダイコンがないと人は生きていけないが、小説なんかなくても生きていけるから。

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