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菜摘ひかるを読む―070930

「菜摘ひかる」
クラブホステスからOLを経て、風俗産業入り。ヘルス、性感、イメクラ、SM、ソープを渡り歩き、現在は執筆活動に専念。『ボディ・テラピー』は、問題小説99年11月号に発表。(『ボディ・テラピー』にそえられた著者略歴より抜粋)

菜摘の『ボディ・テラピー』はこんな物語だ。
イメクラ嬢の「私」が深夜、自分の部屋にいそいそと「祐司」をむかえ入れてセックスをする。祐司は客ではなく恋人でもなく「ヤリ友」というわけでもない。私の方は祐司が「会いたくて涙が出るほど好き」なのに、「あっちはそれほどでもなく」、むしろ「やりたくなったときだけフラッと」部屋にきて、「射精したらさっさと眠って明け方に帰っちゃう」男だが、肝心なのは私に愛があること。「お金まみれでこんなに荒んだ私でも男に惚れることができるんだ」という実感を、私は祐司とのセックスでえる。「気まぐれにこの部屋を訪れる祐司の精液と、その余韻だけあれば」、「自分を見失わずにセックスのお仕事ができる」、というイメクラ嬢の私のモノローグで物語は閉じられる。

淋しい女の子の話だ。語り手の「私」と作者の菜摘の間に距離をまったく感じない。イメクラ嬢の「私」は菜摘にぴったり重なる。ポルノ小説というかたちで排泄された菜摘の淋しさは、あまりにも痛切だから、小説の完成度とは無関係に、わたしの胸にとどいた。

菜摘は25歳か26歳で『ボディ・テラピー』を書いた。それを収録した『耽溺れるままに』の初版は02年7月。わたしが読んだのは04年の秋ごろで、そのとき彼女がすでに死者であることを知らなかった。02年11月4日、菜摘ひかる逝去、享年29。

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著者:打海 文三
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