NATUMI

菜摘ひかるを読む―071007

承前

菜摘ひかる『ボディ・テラピー』の追記

「私」の淋しさは「私」がイメクラ嬢であることに由来する
というふうに描かれている。
だがこの小説は、たとえばふつうのOLである「私」が「偽善と回避と怠惰とお金まみれでこんなに荒んだ私でも男に惚れることができるんだ」という実感を彼とのセックスでえる物語として、あるいは「気まぐれにこの部屋を訪れる彼の精液とその余韻」だけあれば「自分を見失わずに専業主婦のお仕事ができる」という専業主婦の「私」の物語として、書き換えが可能だ。
つまり「私」が公務員でもOLでも学生でも専業主婦でも派遣労働者でも資産家の娘でも妻でも、この小説は成立する。

おそらく「私」の淋しさは「私」が女の子であることそれ自体に由来している。
とりあえずそう考えてみる。
ただしモチーフの普遍性を、菜摘が意識している気配はない。

当時の菜摘は、いやもっと以前から、物心ついた少女時代からずっと、自分の問題と格闘するのに精一杯で、それどころじゃなかったのだと思う。


Book 愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫 う 7-3)

著者:打海 文三
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (3) | トラックバック (0)

菜摘ひかるを読む―070930

「菜摘ひかる」
クラブホステスからOLを経て、風俗産業入り。ヘルス、性感、イメクラ、SM、ソープを渡り歩き、現在は執筆活動に専念。『ボディ・テラピー』は、問題小説99年11月号に発表。(『ボディ・テラピー』にそえられた著者略歴より抜粋)

菜摘の『ボディ・テラピー』はこんな物語だ。
イメクラ嬢の「私」が深夜、自分の部屋にいそいそと「祐司」をむかえ入れてセックスをする。祐司は客ではなく恋人でもなく「ヤリ友」というわけでもない。私の方は祐司が「会いたくて涙が出るほど好き」なのに、「あっちはそれほどでもなく」、むしろ「やりたくなったときだけフラッと」部屋にきて、「射精したらさっさと眠って明け方に帰っちゃう」男だが、肝心なのは私に愛があること。「お金まみれでこんなに荒んだ私でも男に惚れることができるんだ」という実感を、私は祐司とのセックスでえる。「気まぐれにこの部屋を訪れる祐司の精液と、その余韻だけあれば」、「自分を見失わずにセックスのお仕事ができる」、というイメクラ嬢の私のモノローグで物語は閉じられる。

淋しい女の子の話だ。語り手の「私」と作者の菜摘の間に距離をまったく感じない。イメクラ嬢の「私」は菜摘にぴったり重なる。ポルノ小説というかたちで排泄された菜摘の淋しさは、あまりにも痛切だから、小説の完成度とは無関係に、わたしの胸にとどいた。

菜摘は25歳か26歳で『ボディ・テラピー』を書いた。それを収録した『耽溺れるままに』の初版は02年7月。わたしが読んだのは04年の秋ごろで、そのとき彼女がすでに死者であることを知らなかった。02年11月4日、菜摘ひかる逝去、享年29。

Book 愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫 う 7-3)

著者:打海 文三
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

菜摘ひかるを読む―070924

承前

Book 耽溺(おぼ)れるままに (徳間文庫―問題小説傑作選)

著者:徳間文庫編集部
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ほれ、おやじども、これでも読んで勃起しろ、とぞんざいに扱われた気が。そう扱われても仕方ないような気もするけど。というのが全11編を読みおえた最初の感想。わたしは勃起しなかったが、人それぞれだから勃起する人もいるだろう。そうだとしても不満が残る。セクシュアリティはもっと繊細に扱ってほしい。要求が高すぎるか。紙に印刷した記号で人間を性的に興奮させるというポルノ小説って、不思議でおかしみのある興味深い創作活動だと思うんだけどな。

これも全体の印象だが、ほとんどの作品に、とりあえずメシを食うためにポルノを書くけどほんとに目指してるのはべつの方向なのよね、というようなブンガクへの欲望が薄っすらと感じられるところが気に入らない。読者から言えば、そんなことよりまずポルノ小説に集中して、勃起させてくれないと。作家たちの顔が、読者ではなく、おやじ編集者とかおやじ文藝評論家の方へ向いていると思う。ようするにイタイ。

菜摘ひかるの『ボディ・テラピー』もぜんぜん勃起させてくれない。
でもほかの10編とは異質だ。
菜摘が読者をぞんざいに扱っている感じはない。
そもそも勃起させようという気がないような。
ブンガクへのつまらない欲望もない。
おやじ編集者、おやじ文藝評論家、もしかすると読者にすら
菜摘は関心がない。


Book 愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫 う 7-3)

著者:打海 文三
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

菜摘ひかるを読む―070916

承前。
女性作家の官能小説の再読。

Book 耽溺(おぼ)れるままに

著者:徳間文庫編集部
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

『悪女誕生』小川美那子
「気持ちいいだろ!!」
「ええ、ええ、気持ちいいわ~」


『恥骨の驕り』斉藤綾子
あの時、正常位で挿入して、山崎クンは抜かずの三発、立て続けに射精した。


『涅槃境』菅野温子
「くうう、早くいれてぇ」
 ズブリと貫かれる瞬間が、快楽主義者の私のお気に入りだ。


『流れる花』田中雅美
突き、引くごとに、亜衣のねっとりした内部が絡みつき摩擦する。
「つながってるとこ、見てえ」


『公園ハーレム』内藤みか
「ああ、あはぁ・・・・・・ッ!」
乳首からぴッ、ぴッ、と生温かい汁を飛ばしながら、声が高ぶっていく。


以上、興奮せず。あと4編。

『指の分だけ待って』中村嘉子
大きい――と思った。
が、妙子が感動し、昂奮したのは、大きさよりも硬さだった。


興奮せず。

『ボディ・テラピー』菜摘ひかる
細い布をさらによじって細くして、かろうじてビラビラだけが隠れているような状態にまで引っ張られた。

興奮せず。この小説についてはあとでふれる。

『体が覚えている』みなみまき
そこを大杉のモノが激しく貫いていく。
「うおおっ! むうっ・・・・・・」


興奮せず。

『シェヘラザードの首」森奈津子
すっぽりと全体を咥え込んでから、シェヘラザードは内側の筋肉を引き締めた。
「ああっ!」


興奮せず。全11編を読了。

結城信孝の「解説」から引用する。
女性作家特有の性の心理や心のひだが、極上のエロスを放射しつつ、官能の極地へと読者を誘っていく。

嘘でしょ。



| | コメント (0) | トラックバック (0)

菜摘ひかるを読む―070901

Book 耽溺(おぼ)れるままに

著者:徳間文庫編集部
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

菜摘の作品をはじめて読んだのが、
女性作家による官能小説のアンソロジー「耽溺れるままに」。
ほかの作家から再読する。

『今夜こそ』一条きらら
蜜に濡れた花芯の襞が、ふるえながら熱く脈打ち、男の指を早くと求めて恋焦がれ、悶える肉体となってしまうのだった。

興奮せず。

『操られた夜』岡江多紀
橋本の舌が敏感な粒をとらえ、突いたり、こねまわすように攻めてくる。

興奮せず。






一九七二年のレイニー・ラウ Book 一九七二年のレイニー・ラウ

著者:打海 文三
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

日記 | 映画 | NATUMI